「灸という言葉は知っているけど、実際に施術を受けたことがない。」という方も多いのではないでしょうか。灸による施術は、3つの効果に分けることができます。
そこで今回は、灸の歴史や施術効果、安全性などについて解説していきます。
灸とは、ヨモギの葉の裏にある繊毛を精製した「もぐさ」を皮膚の上に置いて燃やし、温かい刺激によって体調を整える施術のことをいいます。灸は、灸師という国家資格を取得した施術者しか行うことができません。
灸の歴史は長く、今から2000年以上前、古代中国の北部地方で発祥したといわれています。日本では、奈良時代に灸の施術が伝えられ、江戸時代には庶民にも広まっていきました。
その後、明治時代には政府の方針により、現在の医療で一般的な西洋医学が強く推し進められ、鍼灸による施術は衰えていきました。しかし、民間での支持が強かったため、はり師・灸師は国家資格として制定されるほど、認められるようになったのです。
戦後には、はり師・灸師などに関する法律の制定や研究が行われるようになり、ここまで鍼灸が発展していきました。
灸の施術を行うと、主に以下の3つの効果が得られます。
灸の温かい刺激が皮膚の下にある筋肉や血管、リンパ節に作用し、細胞が活性化され、免疫力が向上します。また、リンパの流れが促進されるため、むくみが緩和されます。さらに、温熱効果が血管を収縮・拡張させ、局所の充血や貧血を調整してくれるため、炎症も和らぎます。
もぐさには、シネオールという精油成分があります。シネオールには、消毒・殺菌・鎮静・鎮痛作用などがあり、灸の施術を行うことで皮膚の表面から身体の内部に浸透していきます。その結果、痛みを和らげるといった効果が得られます。また、もぐさの匂いには、リラックス効果もあります。
身体には、経絡(けいらく)と呼ばれるエネルギーの通路が全身に張り巡らされており、その通路に身体のエネルギーや血液、水分が流れています。この3つが不足したり、滞ってしまうことで、身体の不調があらわれると東洋医学では考えられています。
身体の不調は、ツボ(経穴)と呼ばれる経絡の集合体に反応が出るといわれています。そのため、ツボ(経穴)を刺激して身体のバランスを整えていくことで、症状が緩和されるのです。このようなツボ(経穴)は361種類もあり、場所によって緩和される症状が異なります。
灸の適応症は、便秘や頭痛、不整脈、気管支喘息、坐骨神経痛など、49疾患あると世界保健機関が発表しています。
先程、身体には361種類のツボがあるといいました。今回は、5つのツボと適応症をご紹介します。
風池は、首の後ろにある左右の筋を通って指を上げていき、髪の生え際の左右外側にあるくぼみで一番へこんでいるところです。
風池を刺激すると、風邪や頭痛、目の疲れなどを緩和させることができます。
肩井は、両胸の真ん中から真上に指を上げていき、肩の一番高いところを押して痛みを感じるところです。
肩井を刺激すると、首や肩のこり、寝違え、歯の痛み、頭痛、冷え性などを緩和させることができます。
中脘は、おへそに小指を当てて親指まで指5本分の幅をとり、親指が当たっているへこんでいるところです。
中脘を刺激すると、胃腸の働きを高めることができるため、咳や胆、消化不良、むくみ、動悸、息切れ、不眠などを緩和することができます。
神門は、手首を曲げたときにできるしわを小指側になぞり、骨の出っぱりの手前で止まる位置にあります。
神門を刺激すると、不眠や不安、動悸、息切れ、便秘などの症状を緩和させることができます。
三陰交は、内くるぶしの一番高いところに小指を置き、4本の指を揃えた幅をとり、人差し指が当たっているところです。
三陰交を刺激すると、消化器や肝臓、腎臓などの働きを助け、生理不順や生理痛、むくみなどの症状を緩和することができます。
灸で施術を考えている方の中には、以下のような不安を抱えているかもしれません。
灸による火傷が不安であれば、火傷の痕が残らない「無痕灸」を選択することをおすすめします。無痕灸には、既製の台座や筒状の台座に置いて行う台座灸、灸を棒状にした棒灸など
があるので、自分にあった灸を見つけることができると思います。
妊婦でも灸の施術を受けることができ、つわりや疲労感、腰痛、むくみなどに効果が期待できます。ただし、以下のように、灸の施術を行う際の体位に注意が必要です。
灸の効果は、大きく3つに分けられます。1つ目は、血行促進による免疫力の向上。2つ目は、鎮痛作用やリラックス効果。3つ目は、便秘や頭痛、不整脈、気管支喘息などの様々な症状の緩和。また、灸は妊婦の方でも施術を行うことができ、火傷痕が残らないものあるため、一度施術を受けてみてはいかがでしょうか。