あん摩と呼ばれる施術は、あまり聞き馴染みのない言葉だと思います。そのため、どんな施術内容なのかも、あまりイメージできないのではないのでしょうか。
そこで今回は、あん摩がどのような施術なのか解説していきます。
あん摩は、「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格を取得した施術者が行う施術の1つです。「なでる・押す・揉む・叩く」などの手技を用いて、身体が持つ恒常性維持機能(※)を反応させ、身体の調子を整えていきます。そして、あん摩の基本手技は、以下の5つに分類することができます。
※ 恒常性維持機能とは、外的・内的環境が変化しても、身体の状態を一定に保とうとする働きのこと。
軽擦法とは、手のひら、親指、二本指、四本指などを患部に密着させ、平らに撫でてさする施術のことです。このとき、同じような圧のかけ方と速度で、末梢から中枢の一定方向に向かって撫でたり、さすったりしていきます。
揉捏法とは、手のひらや指、肘などを患部に密着させ、垂直に圧をかけながら、もみほぐす施術のことです。基本的には、筋肉を対象とした手技療法になります。
叩打法とは、こぶしや手のひらで身体の表面をリズムよく、軽く叩いて刺激を加えるものです。このとき、叩く速さは1秒間に2~5回程度で関節を滑らかに動かし、弾力をつけた状態で左右交互に叩くことが重要となります。
圧迫法とは、指の頭や手の付け根などを使って局所を圧迫する施術のことで、間歇性(かんけつせい)圧迫法と持続性圧迫法の2種類あります。間歇性圧迫法は、一定の間隔をおいて圧迫と弛緩を繰り返し行なうものです。一方、持続性圧迫法は、3~5秒の一定時間圧迫して行うものになります。
運動法とは、関節を十分に緩めた後、動かしていく施術のことです。このとき、各関節の運動方向と生理的可動域に注意しなければなりません。
あん摩には、曲手をいうものもあります。曲手は、叩打法が変形したものだといわれており、車手や突手、挫手などの独特な手を使って施術を行います。そのため、パフォーマンスとして使われることが多く、施術としての効果が薄れてきているようです。
あん摩には、5つの基本手技があると理解していただけたかと思います。それでは、それぞれの手技でどのような効果が得られるのでしょうか。
軽擦法で得られる効果は、強い軽擦法と弱い軽擦法で異なります。強い軽擦法は、血行が促進されるため、新陳代謝がよくなったり、鎮静効果が期待できます。一方、弱い軽擦法は、知覚神経を刺激するため反射作用が起こり、爽快感を感じることができます。
揉捏法を行うと、筋肉の柔軟性が高まるため、血行が促されます。それによって、溜まっていた老廃物の排出を促進し、筋肉に新しい栄養と酸素が供給されて、新陳代謝がよくなります。また、スポーツによる急性疲労やデスクワークによる慢性疲労も緩和されます。
叩打法による刺激によって、神経や筋肉の動きが活発になるため、血行が促進されます。また、神経や筋肉の興奮を高めたり、落ち着かせることもできます。さらに、力の強さを調節することで、神経や内臓の機能を整えることもできます。
圧迫法を行うことで得られる効果は、間歇性圧迫法と持続性圧迫法で異なります。
間歇性圧迫法を上肢や下肢に行った場合、静脈やリンパの流れが促進されます。また、腹部に間歇性圧迫法を行った場合、腹腔内圧を変えることがき、胃腸の機能を活発にすることができます。
一方、持続性圧迫法は、神経や筋肉の興奮を抑えたり、神経痛の痛み、痙攣を緩和させることができます。
運動法を行うと、関節内の血行が促されます。また、関節滑液の分泌も促されるため、関節が動かしやすくなったり、関節の可動域制限を予防することができます。
あん摩による施術を行っている「あん摩マッサージ指圧師」は、あん摩だけでなく、指圧やマッサージによる施術も行うことができます。
指圧とは、衣服の上から指や手のひらなどを使い、身体の表面にある一部位を押す施術のことです。指圧を行うことで皮膚の働きが活発になり、筋肉の緊張が緩和され、血液やリンパの循環が促進されます。また、骨格が矯正されるため、神経や内分泌の働きが整えられ、内臓の働きが活発になります。
マッサージとは、オイルやパウダーを使って、手足から身体の中心に向かって皮膚を直接刺激する施術です。マッサージを行うと、血液やリンパの流れが促され、筋肉や関節など様々な部位に対して効果が得られます。
マッサージには、あん摩マッサージ指圧師が行うものと、リラクゼーションが目的のものがあります。
あん摩マッサージ指圧師が行うマッサージは、施術者が国家資格を取得しているため、一部症状(※)において健康保険が適用されます。
一方、リラクゼーションが目的のマッサージは、民間の資格を取得した施術者が施術を行うため、健康保険が適用されません。したがって、施術者が取得している資格を確認することが大切です。
※ 一部症状とは、筋肉の麻痺や関節の可動域制限といった症状のこと。
いかがでしたか。あん摩は、「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格を取得した施術者が行う施術の1つです。あん摩には、軽擦法・揉捏法・叩打法・圧迫法・運動法といった種類があるため、症状に応じて手法を使い分けます。
また、あん摩の場合、筋肉の麻痺や関節の可動域制限などにおいて健康保険が適用されるため、費用の負担を抑えることができます。